・今回ピックアップしていくのはIND@KCです。昨年POの再戦となったこの試合は、大方の予想を裏切ってINDが勝利しました。その中でハイスコアリングオフェンスとして知られるKCをIND守備陣がどのような方法で10点に抑えたのか。これを見ていきます


前提知識 Week4 KC@DET戦
 この試合を見る上で参考になるのが1週間前にあったDET戦です。KCは34点を獲得したものの、Mahomes自身はTDパス0個と決して良いパフォーマンスでは無かったです。
 この試合でDET側は3〜4メンでのパスラッシュ。LBは1人だけ。RBも含めてレシーバーにはマンツーマンカバーで対応(5人)。残りの1〜2人はディープミドル(30〜40ヤードより奥)またはミドルゾーン(20ヤード付近のフィールド中央)でカバーの補助という役割で守りました。これを踏まえてこの記事を読んでください


IND側のアプローチ side:パスラッシュ
①基本4メンラッシュ
②DEはコンテインラッシュ、DTはポケット破壊
③Cは無視してOG/OTとの1vs1を仕掛ける
④MLBによるQBスパイとセカンドコンテイン

 対ポケットパサーへの定石である4メンラッシュとポケット破壊をIND側は選択しました。機動力があり、ポケットに出てからビッグプレイを決めれるPatrick Mahomes相手なら至極当然のことですね。1つずつ見ていきたいと思います
 ①は4-3守備なのでそのままです。パスカバーに7人割くことで投げるまでの時間を稼ぐことを狙いました
 ②はMahomesをポケットに留めるための方法です。コンテインラッシュとはQBがドロップバックした位置よりも後ろに回らないことです。サックは狙いにくいものの、QBはポケットの外に出にくくなります。DTはOGを抜くのではなく、押し込むことでポケットを小さくすることを狙いました。これにより、QBがステップアップする場所を潰すことが出来ます(下の画像が理想形です)IMG_1694
 ③は4-3のパスラッシュで良く見られるアプローチです。Cはパスプロテクションに置いては補助に回る立場です。なので、OGが押し込まれるとCも一緒に下がることになります。そのため、DTがOGを押し込むことでQBに圧迫感を与えることができます。これは両DTが両OGを押し込まないと意味がない(段差が出来るのでQBは逃げることが可能)です。INDはこれを多くの場面で成功させました
 ④またINDはMLBのパスカバーの責任を減らすことで、Mahomesがポケットに出てから自由になる時間を減らしました。セカンドコンテインとは、ポケットから逃げたQBにLBがプレッシャーを掛けることです。これによってスクランブル対策をしましたIMG_1691
 上の画像のように、ポケットに出てからもMahomesが使えるスペースを制限しようと試みていました


IND側のアプローチ side: パスカバー
IMG_1692
 カバーは基本的に単純なマンツーマンとシングルSのコンビでした。上はLBの1人がRBのマンツーマン責任を負い、もう一人がQBスパイになります。(画面内に10人いるので、フリーのSが1人だとわかります)IMG_1693
 こちらは画面内のディフェンスが9人なので、フリーのSが2人いるパターンです。この場合はMLBがRBのマンツーマン責任になります。この2つが基本のパターンとして解説を続けます
①フィールド中央にフリーの選手を残すことで早いタイミングのシャロークロス(フィールドを横断するパスコース)に対応する
②責任を明確にすることでコンビネーションルートを無効化する
③ゾーンの隙間がないので、普段よりもオープンになりにくい

 ①KCの厄介なパスコースにフィールドを横断する選手へのパスがあります。ゾーンカバーの際は逆サイドから来るため反応が遅れ、RACによるアフターヤードを狙われます。従来だと後ろに待機したSが反応してタックルで止めていました。今回はフリーの選手(MLBないしS )が残ることで、彼らがシャロークロスへ寄る間にマンツーマンの選手が間に合う環境をつくりました
 ②KCはバンチフォーメーションやニアセットからのパスパッケージを多く使用します。マンツーマンにすることで守備側の責任が明確になり、カバーミスの可能性が低くなります。これでパッケージを無効化しました
 ③またKCのパスコースはゾーンの隙間を狙うものが多いのですが、マンツーマンは当然ゾーンの隙間なんて存在しません。その結果、普段以上にタイトなカバーとなり、Mahomesに投げにくさを強要しました


なぜこの作戦が成功したのか
①MahomesはオープンになったWRにしか基本的にパスを投げない
②Mahomesはポケット内に留まってパスを投げる回数が多くない
③Tyreek Hillの不在
④OLの弱体化
 ①MahomesはAaron Rodgersなどのようにタイトカバーの選手へのパスが少ない選手です(その結果INTが少ない訳です)。マンツーマンはゾーンカバーと比較してオープンなWRが出来にくいため、投げるタイミングがいつもより遅くなりました
 ②またMahomesは窮屈な状態でパスを投げることを嫌う選手であり、ポケット外からプレイを決める能力があります。INDのラッシュによってMahomesはスペースを奪われました
 ③今までこのアプローチが無かったのはマンツーマンを余裕で剥がせるTyreek HillというWRがいたからです。そのHillは現在負傷で離脱しており、そのため作戦が上手くいきました。残りのWR陣だとなかなかオープンになれないのは今後のジレンマになりそうです
 ④OLはLT Eric Fisherを怪我で、C Mitch MorseをFAで(BUFと契約)失ったことで弱体化しています。特にLTに入ったCameron ErvingはDE Justin Houstonに蹂躙されておりました


まとめ
 長々と書いた訳ですが、INDはブリッツも入れていましたし、ゾーンカバーも使っていました。ゾーンカバー使った結果最初のTDをされたわけですが、CBブリッツはサックという結果を生んだので、分の悪い賭けではないかもしれません。とりあえずコンテインミス=パス成功はDET戦、IND戦を見ていて感じたことですね。要求されるレベルが高過ぎる…
 今後このアプローチが流行るのか?に関しては否だと思います。4メンで1試合プレッシャーかけれるフロント持ってるチームなんぞ数えるほどでしょうし、タックル力とマンツーマン能力まで加味すれば数チームですから。アプローチを真似したものは使われると思います。Hill帰ってきたら使えないのですが…
 あと、あくまでパス攻撃を制限するだけであり、ラン攻撃を止めることまで考えると難しいミッションになります。今後の日程ですとNE, MINあたりは出来そうですが他は厳しそうです。このアプローチに対する安西先生のカウンターも楽しみに今後のKC戦を注目したいです